「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020-2025)【テキスト版】

第3章 政府から企業への期待表明

 

 本行動計画では、政府が関係者の理解と協力の下に行う取組について記載したが、国内外において責任ある企業活動を推進していく上で、企業からの理解と協力を得ることは、特に重要と考えているところ、本項に企業への期待を表明する。

 

 政府は、その規模、業種等にかかわらず、日本企業が、国際的に認められた人権及び「ILO宣言」に述べられている基本的権利に関する原則を尊重し、「指導原則」その他の関連する国際的なスタンダードを踏まえ、人権デュー・ディリジェンスのプロセスを導入すること、また、サプライチェーンにおけるものを含むステークホルダーとの対話を行うことを期待する。さらに、日本企業が効果的な苦情処理の仕組みを通じて、問題解決を図ることを期待する。*3

 

*3 例えば、「指導原則」においては、(1)人権を尊重する責任を果たすという企業方針によるコミットメント、(2)人権への影響を特定し、予防し、軽減し、対処方法を説明するための人権デュー・ディリジェンス手続、(3)企業が惹起し、又は寄与したあらゆる人権への悪影響からの救済を可能とする手続を設置するよう、企業に求めている。また、OECDのデュー・ディリジェンス・ガイダンスでは、デュー・ディリジェンスを、「自らの事業、サプライチェーンおよびその他のビジネス上の関係における、実際のおよび潜在的な負の影響を企業が特定し、防止し軽減するとともに、これら負の影響へどのように対処するかについて説明責任を果たすために企業が実施すべきプロセス」としている。ILO多国籍企業宣言では、「国際的に認められた人権に関連する実際の及び潜在的な悪影響を特定、予防、緩和するとともに、自社がこれにどのように対処するかについて責任を持つため、詳細な調査( デュー・ディリジェンス)を実施」するよう、多国籍企業を含む企業に求めている。経団連では、「企業行動憲章実行の手引き」において、企業に対し、「人権を尊重する方針を明確にし、事業活動に反映する」具体例を提示している。

 

(参考)「指導原則」によると、企業は、人権を尊重する責任を果たすため、次のような企業方針と手続きを持つべきとされている。

 

1 人権方針の策定(指導原則16)

 

 企業は、人権を尊重する責任を果たすというコミットメントを企業方針として発信することを求められている。

 

2 人権デュー・ディリジェンスの実施(指導原則17~21)

 

 企業は、人権への影響を特定し、予防し、軽減し、そしてどのように対処するかについて説明するために、人権への悪影響の評価、調査結果への対処、対応の追跡調査、対処方法に関する情報発信を実施することを求められている。この一連の流れのことを「人権デュー・ディリジェンス」と呼んでいる。

 

3 救済メカニズムの構築(指導原則22)

 

 人権への悪影響を引き起こしたり、又は助長を確認した場合、企業は正当な手続を通じた救済を提供する、又はそれに協力することを求められている。