「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020-2025)【テキスト版】

 

(1)横断的事項

 

オ. 法の下の平等( 障害者、女性、性的指向・性自認等)

 

(既存の制度・これまでの取組)

 

  日本国憲法は法の下の平等を原則としており、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、 政治的、経済的又は社会的関係において差別されないものと定めており、下記のとおり、各種法令 において差別の禁止が定められている。

 障害者に対しては、我が国は、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年 法律第65号。以下、「障害者差別解消法」という。)」において、行政機関等及び事業者に対し、障害があることを理由とする不当な差別的取扱いを禁止するとともに、合理的配慮の提供をしなけれ ばならない旨規定している(事業者の合理的配慮の提供は努力義務)。「障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号。以下、「障害者雇用促進法」という。)」においては、雇用の分野における障害があることを理由とした差別の禁止及び合理的配慮の提供を事業主に義務付けている。

 女性に関しては、男女雇用機会均等法において、雇用管理の各ステージにおける労働者に対する性別を理由とする差別を禁止しているほか、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号。以下、「女性活躍推進法」という。)」を通し、職業生活における女性活躍推進に関する取組を促している。

 さらに、男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)」では、男女共同参画社会を実現するための柱の一つに、「男女の人権の尊重」を掲げている。また、同法に基づき、男女共同参画基本 計画を策定し、関連の施策を実施してきている。国際的にも、G7やG20等の各種宣言において、女性のエンパワーメントの促進を支持するとともに、「国際女性会議WAW!」を開催するなど、女性活躍の更なる推進に向けて取り組んできている。

 また、職場における性的指向・性自認に関する正しい理解を促進するため、性的指向・性自認に関する企業の取組事例等を調査する事業を実施し、調査結果等をまとめた報告書・事例集を作成・公表した。

 日本列島北部周辺、とりわけ北海道の先住民族であるアイヌの人々に関しては、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律(平成31年法律第16号)」において、アイヌであることを理由とする差別等を禁止するなどしている。

 雇用分野では、憲法第22条は、「何人も、公共の福祉に反しない限り、(中略)職業選択の自由を有する」旨規定しているほか、「職業安定法(昭和22年法律第141号)」においては、「何人も、公共の福祉に反しない限り、職業を自由に選択することができる」、「船員職業安定法(昭和23年法律第 130号)」において、「その能力及びその有する免状若しくは証書、その受けた訓練又はその経験に よる資格に応じ、適当な船舶における船員の職業を自由に選択することができる」ことが定められており職業選択の自由が保障されている。

 住居及び公衆の使用を目的とする場所又はサービス(ホテル、飲食店、喫茶店、映画館、運送機関の利用)等の分野では、それぞれ特定の利用者に対する不当な差別的取扱いが禁止されている。

 

(今後行っていく具体的な措置)

 

(ア)ユニバーサルデザイン・心のバリアフリーの推進 

  •  障害者差別解消法に基づき、各種広報・啓発活動の推進などの取組を進めていく。【内閣府】
  • 交通・観光・流通・外食業界等における全国共通の接遇マニュアル等の策定・普及、研修の実施等を通じた全国における心のバリアフリーの展開を推進していく。【観光庁】
  • 交通バリアフリー基準・ガイドラインの改正、「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」改正等、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律(令和2年法律第28号)。」の着実な実施を通じ、全国のバリアフリー水準の底上げを図っていく。【国土交通省】
  • 障害の有無に関わらず誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会を実現するため、各種人権啓発活動を実施していく。【法務省】

(イ)障害者雇用の促進

  • 令和元年の改正障害者雇用促進法において導入した、公務部門に対する措置として、国及び地方公共団体の機関の任命権者による障害者活躍推進計画の作成・公表義務等、また、民間の事業主に対する措置として、障害者雇用に関する取組が優良な中小事業主に対する認定制度及び週所定労働時間が一定の範囲内の短時間労働者を雇用する事業主に対する特例給付金制度の創設等を通し、障害者の活躍の場の拡大等の取組を推進していく。【厚生労働省】
  • 障害者雇用においては、複合的な人権侵害を被りやすい当事者(例えば、障害のある女性)に配慮をしていく。【厚生労働省】

(ウ)女性活躍の推進

  • 女性活躍を通じた経済成長の意義を広く示し、ビジネス上の成果を共有していく。【内閣府、外務省、経済産業省】
  • 男女双方がワーク・ライフ・バランスを実現するため、ケアワークの平等な分担を推進する。【内閣府、厚生労働省】

(エ)性的指向・性自認に関する理解・受容の促進

  • 相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動等を、職場におけるパワーハラスメントに該当すると考えられる例として明記する等したパワーハラスメントの防止のための指針の内容の周知啓発等により、改正労働施策総合推進法の着実な施行を図る。【厚生労働省】

(オ)雇用の分野における平等な取扱い

  • 職業紹介、職業指導等については、職業安定法において、「何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分・・・等を理由として、職業紹介、職業指導(船員職業安定法においては部員職業補導)等について、差別的取扱を受けることがない」旨規定しており、公共職業安定所(船員については地方運輸局)は、同機関を通じて求人の申込みを行っている事業所に対し、人種・民族の差別なく就職の機会均等を確保するための指導・啓発を引き続き実施していく。【厚生労働省、国土交通省】
  • 公正な採用選考に関する啓発活動として、応募者に広く門戸を開き、職務に対する適性・能力のみを採用基準にすること等を記載した事業主向け啓発パンフレットを作成し、HP上に公表しているほか、ハローワーク等で開催される事業主向けの公正採用選考に係る研修会にて説明する等の取組を引き続き実施していく。【厚生労働省】

(カ)公衆の使用を目的とする場所又はサービスにおける平等な取扱い

  • 特定の人種・民族であること、男性同士・女性同士であることのみを理由として宿泊を拒否すること等を認めていない「旅館業法(昭和23年法律第138号)」等に則って引き続き着実に実施していく。【厚生労働省】
  • 宿泊料金、飲食料金その他の登録ホテル・旅館において提供するサービスについて、訪日外国人旅行者又は訪日外国人旅行者とその他顧客との間で不当な差別的取扱いを禁止する国際観光ホテル整備法施行規則(平成5年運輸省令第3号)を着実に実施していく。【観光庁】