「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020-2025)【テキスト版】

(4)救済へのアクセスに関する取組

 

司法的救済及び非司法的救済

 

(既存の制度・これまでの取組)

 

 企業による人権侵害に対する救済措置としては、「刑法(明治40年法律第45号)」及び「民法( 明治29年法律第89号)」を始め、「製造物責任法(平成6年法律第85号)」、「労働審判法(平成16年法律第45号)」等関連する法令に基づき、刑事責任の追及、損害賠償請求や、行政措置等によりアカウンタビリティの確保及び救済が図られる。

 こうした救済へのアクセスに関連して、日本司法支援センター( 法テラス) では、資力の乏しい国民や我が国に住所を有し適法に在留する外国人に対し、無料法律相談等の支援を実施し、司法的救済へのアクセス確保に努力してきている。

 非司法的救済では、個別法令に基づく相談窓口(労働者、障害者、消費者等)や、JBICガイドライン、及びJICA環境社会配慮ガイドライン、NEXI環境社会配慮のためのガイドラインに基づく異議申立手続や国際的枠組みに基づく「OECD多国籍企業行動指針」に係る日本NCPを設置している。

 また、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成16年法律第151号)」に基づき、民間紛争解決手続(民間事業者が行う調停、あっせん等)の業務に関し認証を行い、また、その利用に関して、所定の要件の下に、時効の完成猶予、訴訟手続の中止等に係る特例を定めて、その利便性の向上を図っている。さらに、法務局・地方法務局等における人権相談及び調査救済手続を実施

してきている。

 また、個別法令に基づく対応として、労働者、障害者等の分野で枠組みが設けられている。

 

 さらに、「消費者安全法(平成21年法律第50号)」に基づき、苦情相談や苦情処理のためのあっせん等を実施してきている。

 

(今後行っていく具体的な措置)

 

(ア) 民事裁判手続のIT化

  • 訴状等のオンライン提出、訴訟記録の電子化、関係者の現実の出頭を要しないウェブ会議等を利用した争点整理や証拠調べ等の実現を図り、国民の司法アクセスが向上するよう、法制審議会における調査審議を踏まえ、民事訴訟法等の改正を行う。【法務省】

(イ) 警察官、検察官等に対する人権研修*2

  • 警察学校において、新たに採用された警察職員や昇任する警察職員に対して、人権の国際的潮流等を含めた各種人権課題についての教育を引き続き実施していく。【警察庁】

*2  なお、裁判所においても、裁判官の研修を担当する司法研修所において、人権諸条約や国際人権法を含む各種人権に関する研修を行っている。

  • 検察官に対し、その経験年数等に応じて行う各種研修において、人権諸条約や犯罪被害者等をテーマとした講義を実施するなど、広く人権に関する理解の増進に引き続き努めていく。【法務省】
  • 出入国在留管理庁関係職員を対象に、在職年数に応じて実施している研修において、人権関係法規、人権擁護の現状及び人身取引関係の講義等を引き続き実施していく。また、業務の中核となり、実務に携わる職員等を対象とした研修において、人権に関する諸条約、人身取引対策等について講義を実施する等し、人権問題に関する知識を深め、適切な業務処理に資する人材を育成することに引き続き努めていく。【法務省】
  • 任官後5年目程度の労働基準監督官を対象とし、毎年実施される研修において、人身取引をテーマとして取り扱う講義を行っており、人身取引対策の推進における労働基準監督機関の役割などについて理解を引き続き促していく。【厚生労働省】

(ウ)「OECD多国籍企業行動指針」に基づく日本NCPの活動の周知とその運用改善

  • 「OECD多国籍企業行動指針」に基づき、担当3省間の連携強化・円滑化に努めながら、日本NCPとして適切な機能を果たす。具体的には、公平性と中立性の確保に努めつつ、手続の透明化を進め、引き続き広報活動を行う。その際、サプライチェーンにおける人権尊重やジェンダーの視点にも留意することとする。政労使で構成される日本NCP委員会と協力し、要すれば適宜有識者からの助言を求めていく。【外務省、厚生労働省、経済産業省】

(エ) 人権相談(みんなの人権110番等)の継続

  • 外国人のための人権相談所等では、10か国語での外国語による人権相談に対応している。さらに、子どもや女性の人権問題に関しては、専用の相談電話を設置している。【法務省】

(オ) 人権侵害の予防及び被害の救済

  • 人権相談等を通じて人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には、所要の調査を行い、関係機関の連携を図りつつ、事案に応じた適切な措置を講ずることによって、被害の救済及び予防を図る。【法務省】

(カ) 個別法令等に基づく対応の継続・強化(労働者、障害者、外国人技能実習生を含む外国人労働者、通報者保護)

  • 技能実習法に基づき、出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣への申告のほか、外国人技能実習機構による技能実習生に対する母国語での相談対応及び人権侵害発生時等、技能実習の実施が困難となった際の転籍支援を引き続き実施していく。【法務省、厚生労働省】
  • 我が国では、通報者の保護に関し、一定の要件を満たして通報を行った通報者の保護を図るとともに、国民の生命、身体、財産の保護に係る法令の遵守を図ることを目的とする「公益通報者保護法(平成16年法律第122号)」を制定している。G20大阪サミット首脳宣言及び「G20効果的な公益通報者保護のためのハイレベル原則」も踏まえ、事業者及び行政機関(地方公共団体を含む)における通報・相談窓口設置の促進を引き続き図っていく。【消費者庁】

(キ) 裁判外紛争解決手続の利用促進

  • 企業活動がもたらす課題や人権侵害に関する救済へのアクセス改善に資するものとして、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」に基づく認証紛争解決手続や【法務省】、その他の様々なステークホルダーが提供する取組について、その利用促進を図るため、周知等の支援を行う。【全府省庁】

(ク) 開発協力・開発金融における相談窓口の継続

  • JICAは、 環境社会配慮ガイドラインの遵守を確保するために、被影響住民がガイドラインの不遵守に関する異議申立を行うことができる制度を設けており、引き続き提供していく。異議申立が行われた場合には、事業担当部署等から独立した異議申立審査役がガイドラインの遵守・不遵守に関する事実を調査するとともに紛争解決に向けた当事者間の対話を促進し、その結果を直接JICA理事長に報告するとともにJICAのウェブサイトで公開していく。【外務省】
  • JBICは、環境ガイドライン遵守を確保するため、環境ガイドライン不遵守に関する異申立の手続を設けており、引き続き提供していく。当該異議申立は、プロジェクトの被害を受け得る当該国の住民により行うことが可能とされており、投融資担当部署から独立した環境ガイドライン担当審査役により判断され、その結果は公開されることになっている。【財務省】
  • JICA、及びJBICにおいて、今後も運用の改善等を通じて、実効性の向上に努めていく。【外務省、財務省】