「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020-2025)【テキスト版】

 

(1)横断的事項

 

ア. 労働(ディーセント・ワークの促進等)

 

(既存の制度・これまでの取組)


 これまでの取組として、労働分野においては、「ILO宣言」に述べられている基本的権利に関する4つの原則(①結社の自由及び団体交渉権の実効的な承認、②あらゆる形態の強制労働の撤廃、③児童労働の実効的な廃止、④雇用及び職業についての差別の撤廃)の尊重、促進及び実現のために労働政策を推進し、ディーセント・ワークの実現に努めてきた。例えば、国籍、人種、民族等による差別なく、労働者に適用される「労働基準法(昭和22年法律第49号)」、「労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)」、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号。以下、「男女雇用機会均等法」という。)」、「船員法(昭和22年法律第100号)」等の労働法令を通して労働者の権利の保護及び推進を図っている。

 近年では、2019年の「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号。以下、「労働施策総合推進法」という。)」等の改正により、事業主の職場におけるパワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置義務(相談体制の整備等)の新設、セクシュアルハラスメント等の防止対策の強化(セクシュアルハラスメント等に関する相談をしたこと等を理由とする不利益取扱いの禁止等)を行っている。

 グローバル化に伴い、外国人労働者の処遇について注目が集まっている中、外国人技能実習制度については、2017年11月に施行された「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成28年法律第89号。以下、「技能実習法」という。)」や送出国政府と作成した二国間取決め等に基づき、技能実習制度の適正化及び技能実習生の保護を図っている。

 

(今後行っていく具体的な措置)

 

(ア)ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の促進((1)雇用の促進、(2)社会的保護の方策の展開及び強化、(3)社会対話の促進、(4)労働における基本的原則及び権利の尊重、促進及び実現等)

  • 「ILO宣言」に述べられている基本的権利に関する原則の尊重、促進及び実現のために労働政策を推進し、女性活躍の推進にも貢献するワーク・ライフ・バランスの確保も含むディーセント・ワークの実現に引き続き努めていく。【内閣府、厚生労働省】
  • 批准することが適当と認められる基本的なILOの条約及び他のILOの条約の批准を追求するための継続的かつ持続的な努力を払っていく。【内閣官房、人事院、総務省、外務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、防衛省】

(イ)ハラスメント対策の強化

  • 改正労働施策総合推進法等の履行確保を通じてハラスメントのない職場環境の実現に向けた取組を引き続き推進していく。【厚生労働省】

(ウ)労働者の権利の保護・尊重(含む外国人労働者・外国人技能実習生等)

  • 外国人を雇用する事業主に対する労働法令の遵守及び「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(平成19年厚生労働省告示第276号)について、セミナー等を通じて事業主への周知徹底・意識啓発を図る。【厚生労働省】
  • 外国人労働者のために、都道府県労働局、ハローワーク、労働基準監督署において、多言語による対応を引き続き実施する。【厚生労働省】
  • 技能実習制度においては、平成29年から施行した技能実習法に基づく新たな制度の下、監理団体の許可制や技能実習計画の認定制の導入、技能実習生への人権侵害の禁止規定や人権侵害を行った監理団体等への罰則規定の整備、外国人技能実習機構による実地検査の実施や技能実習生からの母国語相談・申告窓口の設置、二国間取決め等による制度の適正化を、ジェンダーの視点も踏まえつつ、引き続き実施する。技能実習制度の運用に関するプロジェクトチームが取りまとめた改善方策を引き続き着実に実施するほか、技能実習生の失踪防止に向けた新たな施策の実施に取り組む。【法務省、外務省、厚生労働省】

イ. 子どもの権利の保護・促進

 

(既存の制度・これまでの取組)

 

 これまでの取組として、政府は人間の安全保障基金や国際機関への拠出等を通じ、児童労働の撤廃につながる教育や人身取引(性的サービスや労働の強要等)対策といった分野の取組を支援してきた。また、JICAの技術協力や様々な国連機関への拠出を通じ、主に東南アジア諸国の人身取引対策及び被害者保護の強化に向けた取組を支援してきた。さらに、政府は、人の密輸・人身取引及び国境を越える犯罪に関するアジア・太平洋地域の枠組みである「バリ・プロセス」への拠出・参加等を行ってきているほか、「オンラインの児童性的搾取撲滅のためのWePROTECT世界連携」にも参画してきている。加えて、日本が議長国として取りまとめたG20大阪首脳宣言及びG20労働雇用大臣会合大臣宣言において、児童労働等を根絶することへのG20のコミットメントを再確認した。これらの取組に際しては、女性や少女が被害者に多く含まれていることを踏まえ、ジェンダーの視点にも十分に留意している。

 国内においては、「子どもに対する暴力撲滅パートナーシップ(GPeVAC)」のパスファインディング国(参加国)として、市民社会及び企業等と共に「子どもに対する暴力撲滅行動計画」の策定作業に着手している。同行動計画は、「子どもパブコメ」を通じて得られた子どもの意見を尊重し、策定作業に取り組んでいる。また、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成20年法律第79号。以下、「青少年インターネット環境整備法」という。)及び基本計画に基づき、関係府省庁が協力して、フィルタリング等青少年保護に係る取組の充実等、青少年を取り巻くインターネット利用環境の整備に取り組んできている。さらに、東京2020大会までを視野に、「子供の性被害防止プラン」に基づき、児童買春、児童ポルノの製造等の子どもの性被害の撲滅に向けて取り組んでいる。

 

(今後行っていく具体的な措置)

 

(ア)人身取引及び性的搾取を含む児童労働撤廃に関する国際的な取組への貢献

  • 「バリ・プロセス」への拠出・参加を含む国際社会等との協力の下、JICAの技術協力や様々な国連機関への拠出を通じた、ジェンダーの視点も踏まえた人身取引対策及び被害者保護の強化に向けた取組を引き続き支援していく。【外務省】
  • 国際機関等への拠出を通じた、児童労働の撤廃に向けた取組の支援を引き続き行っていく。【外務省、厚生労働省】

(イ)旅行業法の遵守を通じた児童買春に関する啓発

  • 旅行業法(昭和27年法律第239号)の遵守を通じた児童買春に関する啓発及び、旅行業者が児童買春を目的とするような不健全旅行に関与しないよう旅行業法に基づく立入検査を引き続き実施していく。【観光庁】

(ウ)「子どもに対する暴力撲滅グローバル・パートナーシップ」を通じた取組

  • 「子どもに対する暴力撲滅行動計画」の着実な実施を通じ、性的搾取等を含む国内の子どもに対する暴力撲滅に取り組んで行く。【内閣府、警察庁、法務省、外務省、文部科学省、厚生労働省】
  • 「子どもに対する暴力撲滅基金」の人道分野への関与を通じ、海外における子どもに対する暴力をなくすための取組を推進していく。【外務省】

(エ) 関係業界・団体への「子どもの権利とスポーツの原則」の周知・啓発への協力

  • 国際会議での発信や、地方公共団体、学校、スポーツ団体等への本原則の趣旨の周知・普及啓発への協力を行っていく。【スポーツ庁、外務省

(オ)「子どもの権利とビジネス原則」の周知への協力

  • 関係機関等への本原則の趣旨の周知への協力を行っていく。【内閣府、外務省】

(カ) 青少年の安全・安心なインターネット利用環境整備に向けた施策の着実な実施

  • 「青少年インターネット環境整備法」及び「青少年インターネット環境整備基本計画」に基づいて、青少年の安全・安心なインターネット利用環境の整備に向けて引き続き取り組んでいく。【内閣府】

(キ)「子供の性被害防止プラン」に基づく施策の着実な実施

  • 国民意識の向上及び国民運動の展開並びに国際連携、被害に遭うことなく成長するための児童及び家庭の支援、ツールに着目した被害の予防・拡大防止対策の推進、被害児童の迅速な保護及び適切な支援、取締りの強化と加害者の更生、被害に遭わない社会の実現のための基盤の強化に引き続き取り組んでいく。【内閣府、警察庁、総務省、法務省、外務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省】