「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020-2025)【テキスト版】

 

第2章 行動計画

 

1 行動計画の基本的な考え方

 

 第1章「3.行動計画の策定を通じ目指すもの」に記載した目的を達成するためには、行動計画を通じて政府、企業等、幅広い関係者の行動を促しつつ、必要な制度の整備が必要となる。政府が関係者の理解と協力の下に本行動計画の実施に取り組む上で、特に重要と考える以下の5点を優先分野とする。

 

(1)政府、政府関連機関、地方公共団体等が「ビジネスと人権」に関する理解を促進し、意識を向上させていく上で、関連する法令、政策等の一貫性を確保し、かつ、関係府省庁間において連携を強化することが重要である。

 

(2)企業が、関連法令、政策等を理解・遵守するよう、企業の「ビジネスと人権」に関する理解促進と意識向上を図ることも必要である。特に人的・物的資源に制約のある中小企業の理解促進と意識向上が本行動計画の実効性を高める上で重要である。政府は、政府自身による啓発に加え、国際機関や様々なステークホルダー(利害関係者)が、企業向けに提供するツール等も企業の取組に貢献するとの認識の下、「ビジネスと人権」の分野における課題に対処する上で必要な情報に企業がアクセスできる環境の整備を図る必要があると考える。

 

(3)企業に対して、「ビジネスと人権」に係るより一層の取組を促すためには、社会全体としての人権に関する理解促進・意識向上も必要である。このため、政府は、従来から行われている人権教育、人権啓発の取組を継続していく。

 

(4)企業活動のグローバル化、多様化に伴い、国際社会は、企業に対し、企業内部での「ビジネスと人権」に関する取組の実施だけでなく、国内外のサプライチェーンにおける人権尊重の取組を求めており、企業はこの点に留意する必要がある。これを受け、国際機関の提供するツールの活用や既存の情報開示の枠組み、企業向けの情報提供の取組を活用しつつ、政府として、企業による人権尊重の取組を促す具体的な仕組みの整備に努めていく。

 

(5)企業活動において、人権侵害が生じた場合のために、まず、救済措置(司法的救済及び非司法的救済)が整備されているところ、政府として、引き続き司法的救済へのアクセス確保及び必要に応じた改善に向けて努めるだけでなく、個別法令に基づく相談窓口(労働者、障害者、消費者等)や、(株)国際協力銀行(以下、「JBIC」という。)ガイドライン、(独)国際協力機構(以下、「JICA」という。)環境社会配慮ガイドライン、(株)日本貿易保険(以下、「NEXI」という。)環境社会配慮のためのガイドライン、及びそれらに基づく異議申立手続や「OECD多国籍企業行動指針」に係る日本連絡窓口(以下、「日本NCP」という。)等、複数からなる非司法的救済に関する取組を活用し、アクセス確保及び必要に応じた改善に向けて努める。