インパクト志向の評価指標の検討に向けて

 ビジネスと人権に関する行動計画(NAP)は国がビジネスと人権に関する指導原則を実施するための、つまり国が人権保護義務を果たすための政策戦略であり、そこに掲げられた措置(施策)の実施状況を評価するための指標は、「施策の実施が社会の中でどのような変化を生み出し、権利保持者の人権がどの程度保護されるに至ったか」を評価するものである必要があります。

 政策の評価では一般に、①インプット(政策資源の投入)→②活動(施策の実施)→③アウトプット(産出)→④アウトカム(成果)という流れで政策過程が捉えられますが、「施策の実施が社会の中でどのような変化を生み出し、権利保持者の人権がどの程度保護されるに至ったか」を評価するためには、さらにその先にある社会へのインパクト(影響)、つまり政策の効果や有効性を測る指標が必要です。

 現在、こうしたインパクト志向の評価指標を作成する取り組みが進められています(下記ページを参照)。

 こうした取り組みに際しては、では現状の評価指標はどうなっていて、どのような課題があるのかを検討することも重要です。現状では全体にアウトプット指標にとどまっていると考えられるものが少なくなく、また、87措置(施策)のうち25措置(施策)では評価指標として「実施状況」と記載されており、実質的に評価指標は策定されていないと考えられます。措置(施策)の内容自体が、「施策の実施が社会の中でどのような変化を生み出し、権利保持者の人権がどの程度保護されるに至ったか」を評価する前提を欠いていると考えられるケースもあります。課題は少なくありません。

 こうした中、まずは現状の評価指標の「見える化」を試みたこのウェブサイトは、指導原則のより有効な実施に向けた検討と議論に資することを意図しています。